絶滅危惧種のアカウミガメの母浜回帰及び ふ化幼体の索餌回遊行動に関する調査研究

アカウミガメは生まれた砂浜に回帰する(母浜回帰)と言われていますが、その証明は未だされておりません。
そのため学術調査研究として、アカウミガメのふ化幼体(子ガメ)にPITタグを装着し、数十年後生まれた砂浜に回帰して来るのか、また子ガメの索餌餌回遊を解明することを目的とした試みを2013年から実施しています。

計画の趣旨及び目的

ウミガメ類は特定の砂浜に強く固執し、同じ砂浜に繰り返し上陸して産卵することが知られている。この固執性に対する解釈として「母浜回帰説」がある。しかし、これまで行われてきたミトコンドリアDNAの解析や子ガメの標識放流などでは、母浜回帰説を実証するに十分な証拠は得られていない。その一方で、母浜回帰説に否定的な事実も見つかってきている。産卵地によってメスがほとんど生まれないところもあり、回帰すべきメスが産まれていないにもかかわらず産卵が行われるのは他の砂浜で生まれたメスが来遊からに他ならない。
本調査研究では、屋久島で産卵した卵を採卵して島外の浜に移植して生まれた子ガメにPITタグを装着し、母浜回帰を調査することを目的とする。また、放流後のこれらの個体の索餌回遊を解明することも目的とする。さらに、子ガメから数年ほど経過した幼体の回遊経路が未だ解明されてないこともあり、放流後のこれらの個体の索餌回遊を解明することも目的とする。副次的な効果として、アカウミガメの性成熟年齢や成体になる確率などの解明も期待され、さらに「母浜回帰」が実証されれば、上陸が減少している海浜においてウミガメの回復も期待される。

計画の概要

屋久島に上陸したウミガメが産卵した卵を採卵し、福津市、佐伯市の海岸に移植する。PITタグを装着する子ガメの保護は、ふ化して脱出直前の砂中の子ガメか、または脱出中の元気の良い子ガメとする。また、保護して日数が長ければ、子ガメが弱っていくことと、磁場を感知できなくなるなどの要因で子ガメの生態に悪い影響を及ぼす恐れがあったため、保護してからPITタグを装着するまで日数がかかる子ガメはPITタグを装着せず、夜間速やかに放流する。

海岸の様子

間越海岸(佐伯市)

日豊海岸国定公園のほぼ中央部の九州最東端、鶴見半島の先端部の南に開けた米水津湾口に位置した浜の長さ約800m、奥行きは40mの海浜植生が繁茂した人為の影響の全くない自然海岸である。海岸背後には集落の間に自然林とクロマツ植林で構成された海岸林が発達し砂浜には明かりはほとんど届かない。この海岸裏の集落内には、NPO法人おおいた環境保全フォーラムが運営する「はざこネイチャーセンター」内にウミガメ保護飼育施設があり、職員が常駐しウミガメ産卵調査等を実施している。同法人は佐伯市からウミガメの保護監視業務を委託されているため、移植した卵の管理が容易である。

勝浦海岸(福津市)

勝浦海岸(福津市)は、福津市で最も大きい砂浜で、浜の長さは約5,000m、奥行きは約40m、砂粒が細めで白い砂浜である。数年間隔でアカウミガメの上陸が見られる。後背地は保安林で民家があり、勝浦うみがめ塾の活動する浜で、同団体は福津市からウミガメの保護監視業務を委託されているため、移植した卵の管理が容易である。花火や焚き火は厳禁で、車の乗り入れもできない砂浜である。

本研究の経緯

2013年

海岸名屋久島から移植した巣数(卵数)ふ化数PITタグ装着数 
黒津崎海岸3巣(371個)318匹170匹
元猿海岸2巣(212個)109匹023匹
勝浦海岸5巣(577個)265匹199匹
いなか浜(屋久島)500匹

協力団体のNPO法人おおいた環境保全フォーラムが拠点を間越に移したため、2014年から間越海岸へ移植した

2014年

海岸名屋久島から移植した巣数(卵数)ふ化数PITタグ装着数 
間越海岸3巣(373個)326匹236匹
勝浦海岸3巣(336個)313匹200匹(♂)
いなか浜(屋久島)305匹

脱出までの日数が60日を超え、オスの可能性が高かったが、子ガメの回遊経路を調べるためにPITタグを装着した

2015年

海岸名屋久島から移植した巣数(卵数)ふ化数PITタグ装着数 
間越海岸3巣(294個)189匹105匹
勝浦海岸3巣(444個)320匹50匹(♂)
いなか浜(屋久島)210匹(アカ)
095匹(アオ)

脱出までの日数が60日を超え、オスの可能性が高かったが、子ガメの回遊経路を調べるためにPITタグを装着した

実施主体    NPO法人屋久島うみがめ館
共同研究者   鹿児島大学水産学部 教授 西 隆一郎
協力団体    勝浦うみがめ塾、NPO法人おおいた環境保全フォーラム